拝啓 時下ますますご健勝のこととお慶び申し上げます。
さて、先日は当社求人案件へのご応募いただき誠にありがとうございました。
厳正なる選考の結果、残念ながら採用を見送りましたことをご通知いたします。
ご志望に添うことができませんでしたが、
何卒ご理解の程よろしくお願いいたします。
末筆ではありますが、
貴殿のより一層のご活躍をお祈りいたします。』
「うあぁぁぁぁぁぁあああぁぁぁあぁぁ…………」
口から魂が抜け出るような悲壮感がこれでもかというほどに籠ったやる気の無い叫び声を吐き出しながら、
特型駆逐艦 吹雪型一番艦の艦娘さんとして知られていた吹雪さんが椅子から転がり落ちて、そのまま床の上を呻きながらうねうねと蠢く。非常に絶望感溢れる姿である。が、
まぁなんというか絶望の理由は言うまでもない上記お祈りメールである。
敢えて説明の必要もないかとも思われるが軽く触れておくと就職活動の際の不採用連絡の事である。
文末でお祈りされると言うオメーに言われたくねぇよクソが的な神経逆撫でするそのあり方から「お祈りメール」という名で知られ、全国の就業を志す未来の社畜達の心を折りまくっている憎いあんちきしょうだ。
勇敢な若者が内定辞退の連絡にお祈りメールの文面を使ったところ会社側がキレて怒りの連絡を寄越して来たという、お前は「自分がされて嫌な事を人にしてはいけません」と親に教わらなかったのかクソが、とでも言ってやりたい気分になるが会社様に逆らうようでは立派な社畜になれないという事なのだろう、そんなわけあるかクソが事業失敗しやがれ。なんて感じに人の心をささくれ立たせる無慈悲なテンプレメール。
そして、冒頭に戻るわけだが、もう言わんでも解るように、我らが特型駆逐艦 吹雪さんはそんな非情なお祈りメールに被弾して敗北Dしてしまったのである。
部屋の中という事で、艦娘特有のセーラー服とか制服系統の装いとは違い、その辺の安いことが売りの量販店で買ってきたそのまま外に出るのはどうかと思うのでこれ部屋着でいいよね的な上下のフリースに身を包み、
アイデンティティは忘れないのかうなじのあたりで背中にかかる髪の毛を一つに束ねた姿で
うーうー唸りながらうねうねと部屋を転がりまわり、現実逃避→直視→逃避を繰り返していた。いいんだよ、泣いても。
でも、ちょっと気持ち悪い。
なんて顔に出さずそんな感想を心の中で押し留めて吹雪の情けない姿を真顔で眺めているのは駆逐艦 島風。
ウサギの耳のようにピンと立った大きなリボンを、お前のそれ何色って言えばいいんだ的な感じの頭に着けたとにかく高速艇であることに拘り自分が一番速いと自負するキュートな艦娘さんである。
いや本当、島風ちゃんの髪ってあれ何色なんだ。
そんな何色だか誰か教えてくださいな感じの髪を長く伸ばした、なんか元気っ子なんだけどどうしても半開きの目に見えてしまう超絶可愛い島風ちゃんが、なんでまた転がる吹雪(無職)を眺めているのかというと。
一緒に暮らしているのである!
3LDK。割といいマンションで、一緒に暮らしているのである!
なんでまたこの2人が、とか思うかもしれませんが、なんだ、あれだ、すったもんだあったのだ。
解りやすく説明すると、駆逐艦にしては他の子をぶっちぎってる高速艇である上に姉妹艦のいないオンリーワンしている島風ちゃんがぼっちしていたという鎮守府あるある状況において、我らが主人公吹雪さんがそんなぼっちを放って置けなくて構った。超構った。先輩風というかお姉さん風吹かせて揉みくちゃに構った。
で、なんやかんやとその時の話だけで文庫本一冊分書けるだろうドラマがあったりもしたのだが、結果だけ言うと島風が吹雪に懐いた。笑いあり、涙ありの展開だったが、綺麗に収まって懐いたのだ。
以後、とっても仲良しになった2人。
なんだこう、その、あれだ、なんだかんだあった挙句の海から深海棲艦とかいう謎存在の脅威がなくなってしまった平和な世界で
艦娘とかもういいよね、という流れから普通の女の子っぽくなったという状態で社会に出て平凡に暮らそうとかいうそんなノリ。だもんで仲良かったつーか、島風が吹雪べったりだったということから一緒に暮らしているのである。なお、他の艦娘達も各々勝手気ままに暮らしている、そんな日本。
「吹雪はさー、無理しなくてもいーんだよ。 私は吹雪が家事してくれているから正直助かってるし」
就職失敗してうねうねしたままの吹雪を見かねてか、慰めとも受け取れる言葉をうねうねの横にしゃがんで投げかける島風。なお、こちらも服装はフリース 、色違いのお揃いである。
そんな声に反応したのかうねうね動いていた件の特型駆逐艦、ピタリと動きを止める。但しうつ伏せ状態である。
「……ダメ」
「え?」
「……このまま島風ちゃんに頼っていると私はダメになっちゃうんじゃないかと」
うつ伏せでモゴモゴと喋る吹雪に、ありゃこりゃ結構重症か、と思案する島風。
「……吹雪はさ、今まで働きすぎだったからゆっくり休んだらいいと思うんだよ。 それでなくても家の事やって貰ってるんだしさー」
まぁなぐさめである。なぐさめではあるのだが、
実の所、島風の本心。
艦娘として深海棲艦と戦い続けていたあの日々に於いて、鎮守府の古参であり駆逐艦達のまとめ役としてだけでなく、秘書艦としての精力的な仕事ぶりから第一線で戦い続ける戦艦達からさえも一目置かれていた吹雪なのだ。
子供っぽい姿からか駆逐艦は割と気まぐれな娘が多く、自分などそんな連中の筆頭として吹雪に負担をかけていたと思う。だからこそ。
やっとゆっくり出来るんだから、もっとのんびりしたらいいのに。
そう、本当にそう思う。
だと言うのに
「このままでは……私は……無職型駆逐艦……私なんか、社会から駆逐される側なんだ……」
マジ休めよ。
という言葉が島風の口から出かかるが、ぐっと押し込める。
いや、言ってもいいと思うんだけどね、なんですの、その押し込めた理由って言うのが。
「島風ちゃんは……私の分まで、立派になって、ね」
なんて涙目でムクリと起き上がり島風を見つめてくるのだ。
やべぇ、ヘタレ可愛い。
とか思っちゃうわけですよ。はい。鎮守府に居た頃はとても頼りになる明るいお姉さん、というかお姉ちゃん。的な元気っ子だった吹雪の弱々しい姿になんかこうグッとくるものが込み上げる島風。
そんな内心の興奮を悟られないように、いつものぼーっとした表情を務めて作りながら、吹雪の頭に手を乗せて、ちょっとだけ偉そうに、語る。
「吹雪が凄い事は私が知ってるもん。 吹雪の事を解ってくれない所になんか行かなくていーじゃない、私と一緒にいよーよ、ね」
イケメンか、お前。みたいな、というかむしろ男をダメにする女みたいなセリフを吐く島風さん。冷静に考えればそれを鵜呑みにしたらマジダメなんだろうけど、心弱っている吹雪としては今の島風が「こんなダメな自分を許してくれる女神」に見えてしまうわけで
「しま、かぜ、ちゃんっ……島風ちゃん!」
なんて感極まって泣きながら抱き着いちゃうわけでして。
(´・ω・`)おほー
という抱き着かれたおかげで吹雪に見えないからにやにやと締りのない顔になってしまい何か熱い物が鼻から零れ落ちそうになってしまっている島風の心の中は
(いやぁ、吹雪型は野暮ったい服装が似合うよねぇ)※叢雲を除く
なんていろいろとこう、なんだ、拗らせていた。
就職ブリザード
身も蓋もない酷いタイトルである。
言うまでもなく吹雪さんが就職上手く行かないというアレでソレな話なのだが、まず何がどうなってこうなったかと説明すると
世界は平和になりました。
ということである。
海の底から深海棲艦とかいうなんか敵性体が現れて世界の海を危機的状況に陥れ、それに対抗すべくなんかよく解らんが艦娘とかそんなん出て来て海の平和を守る為に戦っていたとかそんな話があったのだが、
まぁその辺はみあやまの一話でも読んでみてくれ、とか思ったのだがあっちも適当にしか書いてないので、まぁなんだ、なんかそんなもんだ、と思って頂きたく。
ともあれ、そんな危機的状況下で艦娘達の活躍、また彼女たちを指揮して日夜戦い続けた各鎮守府の提督達の活躍のおかげで、現在はそんな日々も過去の物。
平和な時代が訪れた、というそんな時代背景。
と言えばなんとなく察してしまう人もいると思われるのだが、
軍の処遇である。
人間なんて喉元過ぎれば、なんて言葉も有るとおり意外と簡単に苦しかったことなど忘れるものでありまして、平和になってしまえばあの時世話になっていた軍という存在に風当たりが強くなったりもするもので
まぁこの辺いろんな利権も絡んだりとか人間の業の深さが垣間見える心無い所業だったりするのだが
実際問題軍としても戦う敵が居なくなったのにいつまでもこの維持費を維持できねぇという事実にぶち当たりもしたところだったので規模の縮小、そしてあちこちに作っていた拠点の取り壊しなどを行い、
また、軍属になっていた多くの職員も民間、若しくは軍とは関係の無い公務へと移ることになっていった。
もっとも、中核に居て軍の機密などに深くかかわっていた人物が野に放たれるようなことは無かったのだが。
で、困ったのが艦娘達である。
中核と言えばど真ん中の中核。
でもって、実際戦ってきた艦の魂なのだ。
なんかよく解らんけど現れてくれて、脅威と戦ってくれた彼女達。
深海棲艦が居なくなってしまった、この世界でいったいどうなるのか。
あの時、よく解らんけど現れてくれたそれとは逆によく解らんけど消えてしまうのか。
なんていろいろと軍関係者、そして本人達も戦々恐々だったのだが
なんかよく解んないけど
深海棲艦とかと戦っていたあの頃の力とか無くなってて、普通の女の子になっていました。
いや、出自とかなんかいろいろとあるし、パーフェクトに人間か、って言われたらなんか違うし、艦としての戦力は無くなったけど身体能力は人より高いし、弱体化はしたけど艤装着けれるし、みたいなこともあるから普通の女の子と言うには語弊があるのだけれど
まぁ大まかに言えば普通でいいじゃん、そもそも艦娘って存在自体よく解んなかったしね。
ってな感じの事態になった。
と、消えていなくなって悲しいお別れじゃなくてよかったね、となった訳なのだが。
何しろ彼女達、そのほとんどが見た目10代のお嬢さん方なのだ。なのだよ。(念押し) その「ほとんど」から外れるのが誰かとか追及してはいけないが、ほとんどが10代の娘さん達なのだ。なのだよ。(念押し2)
そんな少女とも言える姿をしている彼女たちが軍属としてあくせく働いていると一部の政治団体とか人権とかの市民団体とかが騒ぎ始めたりとかめんどくせぇ事態が起きたりなんて正直余計なお世話が巻き起こり、
うん、まぁ、その、もう平和だしさ、艦娘さん達自由に生きてよ。
ってなったのだ。
要するに解雇である。
でもあれだね、元軍属で凄い活躍した娘さん達という事も踏まえているから当然年金出てるんですけどね。
それでもって実の所、ぶっちゃけ何もせんでも暮らしていける分には貰ってたりするのだ、世間様に公表はされてないけど。
だから実情としては別に働かなくてもいいわけなのだ、この吹雪(無職)さんは。
「――だと言うのに、この前向きで頑張り屋さんというキャラ付された主人公さんは、どうにも働いてないと落ち着かない社畜だったのです」
「別に社畜じゃないよ!?」
「だよね、会社入ってないもんね」
「ぐっはぁ!?」
などと、島風の言葉の五連装酸素魚雷で精神的大破する吹雪。
割と日々のコミュニケーションなんだけど、流石にこう無職が続くと心の痛みが日に日に割増なのである。
そして仲がいい、なんて言ってた上に吹雪の無職を慰めていた割に辛辣な事を言う島風なのだが、これあれだ、涙目になって落ち込む吹雪マジ可愛い、とそんな気持ちが為せる歪んだ愛情。島風ちゃん実は吹雪ラブなのだ。
「まー、大丈夫だよ、吹雪は私が養ってあげるからさ、私お給料いいし」
でもって、なによりこんな事実がある。
そんな言葉にありがてぇ、なんて思うのと同時に、鎮守府時代の世話焼いていた妹分のヒモしてて情けない姿を日々見せている吹雪さんの心の内は複雑である。
複雑っていうかマジ痛い、心痛い、あの頃の力が、あの艤装の力があれば自沈出来るのに、とか思う程に痛い。島風ちゃんごめん、情けない私でごめんね、就職して立派になってこの借り返すからね。
なんて考えてるんだろうな、と今日も床の上でうねうねする吹雪を眺めながら思う島風。
ぶっちゃけ言ってしまえば、そんなこと気にしなくていいのに。ってところなのだ。
別にお金に困ってる訳でも無い、まぁ、年金だけでは贅沢できるほどではないにせよ、割と潤沢。
加えて、吹雪には悪いのだが島風は何の因果か働いている、
しかもアイドルというか、役者というか、テレビに露出する運動能力の高すぎる可愛い小動物系女の子というキャラで大ブレイク中だったりするのだ。
なにがどうなってそうなったのかと言えば町でスカウトされたのだ。島風ちゃん可愛いから。
それでもまぁ、ボーっとしているような顔してるけど島風ちゃんも当然バカじゃない。無職でも別に今まで必死に戦ってきたし、お金あるし、大好きな吹雪と一緒に暮らすことになって不満も何もあるわけない。敢えて言うならそれでも働こうとしている吹雪に吹雪らしいなあとか就職しちゃったら一緒に居れる時間減っちゃうよ、とかそんな程度の話。だから冬の寒い中でもアイス齧りながらふんふん鼻歌歌って歩いていたところを突然スカウトされたところで現状になんら不満の無い彼女としてはホイホイ着いて行くような真似をするわけはないのだ。
普通なら。
「…………何、してるんですか、武蔵さん」
「……スカウト、だな。 アイドルになれそうな子を探してる」
「えっとー……」
「芸能プロダクション、で、働いているんだ……大和の」
「マジで!?」
以上がスカウト時の会話である。
詳しい説明をすると話が長くなる。長くなるので簡単に説明すると――
川内型軽巡洋艦三番艦 那珂。普段から艦隊のアイドルを自称して歌って踊って鎮守府のムードメーカーしていた那珂ちゃん。髪型を頭の左右でお団子にしていた可愛く陽気な、そんな顔に隠された割とガチな戦闘艦の彼女が軍を離れたので本当にアイドルになる、と意気込んでみたところ、元軍の最高機密だった艦娘を芸能界とかいう割とどろどろした世界に引き込むのどうよ、とか思ってしまう上に下手な事したら軍に睨まれるんじゃねこれ的なところからビビった芸能プロダクションが尻込みして話が進まずオーディションも何度か落ちたりしてションボリ 。そんな那珂を見ていた、大和型戦艦一番艦 大和。
「解りました、ならば私が一肌脱ぎます」
と思い立ってしまったのが始まり。
実はコレ大和自身、アイドルとか興味あったりしたのだがうすらデカい自分には似合わないなぁとかなんやかんやいろいろあって、ひたむきに頑張る那珂を応援したくて
ちょっと暴走したのだ。
その辺何となく察していた妹で二番艦の武蔵としては、気持ちも解らんでもないし、世の中そう簡単に事が運ぶこともないだろうし、2人もそれなりにやれば満足するだろうとせっかくなのでなんとはなしに姉の芸能プロダクション立ち上げ計画を手伝ってみたところ、
最近ののんびり暮らしていたことで忘れていた自身の姉の無駄に驚異的な高スペックなその身と他を圧倒するカリスマ、そしてそんな彼女が全力出しちゃったことで
那珂の姉2名も引っ張り込んで川内型3姉妹ユニットを組ませアイドルデビュー。今や街中で彼女たちの歌が流れ聞こえてくる、そんなくらいに当たってしまったのだ。
そしてこの3名だけでプロダクションの看板を任せるのも流石にあれなので、同時に新しくアイドルを育てよう、という事にもなり「ちょっとティンと来た子を拾って来なさい」なんて言われた武蔵が島風に声をかけたというそんな話だ。しょうがない、武蔵的にティンと来ちゃったんだよ島風。ダッフルコートにチェックのマフラーして、 あずきバー齧りながら鼻歌歌って歩いてた島風可愛かったんだもん。
「ここでレア艦をドロップとか……武蔵、やるわねっ」
とかお褒め頂いたのかなんなのか解らないお言葉を大和から頂いている武蔵の横で本当に何となく付いて来てしまった島風だったのだが、このままアイドル歌手にでもさせられるのかなーとか考えていたところ
何を思ったか大和の「ニチアサで行くわ」の一言により
日曜朝の特撮ヒーロー物「光速騎兵 シマカーZ」の主役として大ブレイクするのだった。慧眼にも程がある。
簡単に説明したのに長くなってしまったが、そんなこんなで主題歌も自分で歌ってしまった歌って踊って戦うアイドル島風ちゃんとして現在人気急上昇中。なわけで当然お給料も多いのだ。
つまり、多くの収入がある島風と、無職の吹雪。一緒に暮らしているという事実からどう見てもヒモ、しかもアイドルに寄生すると言う紛うこと無き立派なヒモエリートなのである。
そんなヒモ相手に件の島風ちゃんは、入ったお給料でいつもお世話になっているから、なっていたからとオシャレな食事に誘ったり服なんかプレゼントしたりと好意たっぷりなので更にヒモ度が増す吹雪。このままではヒモフラグシップになってしまう。
そうやってしてくれるのは嬉しいし、吹雪自身も島風の事は可愛い妹分的に大好きなのでとても喜ばしいのだが
心が痛いわけだ。ヒモ的に。
いや正しくヒモならこの流れは歓迎すべきものでヒモとしての面目躍如なのだろうが残念ながらこのヒモは体はヒモなのに心は社畜という実に悲しい生き物なのだった。
と、つらつらと吹雪さんをヒモだの無職だの言って来たわけだが、実際問題としてこの島風やアイドルしている川内型、そしてなんか起業しちゃってる大和型といった面々ははっきり言って上手く行ってしまった超珍しいタイプなのだ。
冷静に考えよう。ばっちり手に職のある工作艦してた明石や給糧艦の間宮などが特殊なだけで、艦娘のほぼ全てが戦うだけの軍艦でしかなかったのだ。
普通の女の子になったので一般職で働け、とか正直無理な話である。
加えて、那珂の時の話でもあったように元軍属であり、履歴書に過去の事が軍の機密事項とかなってるそんな女の子を一般企業の人事の立場で考えてみれば、おいこれどーすんだよマジで、ってな状態。
いかに機密とか言われても、実際に世界を騒がせ、そして苦しめて来た深海棲艦と戦ってくれていたのが見た目少女のよく解らん決戦兵器である。なんて冗談みたいな話だが、どこからか漏れるものであるし
それを冗談だと思ってた人たちも実際に「機密」扱いされている女の子が元軍人扱いという経歴なのだ、嫌でも察する。
ぶっちゃけ、人事だけに留まらず、そんなお方我々の会社に勿体無いと言うかなんというか、勘弁してくださいという心境なのですよ。
というか駆逐艦に限ってしまえば見た目中学生の女の子を働かせようとか問題あり過ぎだと思われる。
で、軍としてもそうなるだろうなーくらいには解ってるし、まぁ、若干そうなるようにした処置なので、もうゆっくりキミらは休んでのんびり暮らしてよ、ってことで年金も多めにしてあるのです。
だが、そこは社畜量産国日本の誇る軍艦である。吹雪筆頭に社畜根性丸出しの者とかがこうして苦しんで、無職の自分に膝をかかえているのである。っていうかその辺ちゃんと説明しなかった軍が悪いんですけどねこれ。
そんな訳で今日もあちこちで無職の元艦娘達が苦しみ、叫び、凹んでいる平和な日常。
吹雪もアイドルになったらいーのに。とか心の片隅で思いつつ、
でもヒモ吹雪を養う自分がちょっと誇らしく、
そしてまた、あの凛々しく素敵だった吹雪が今こうしてへにょへにょしてションボリしている姿を慰めるというこの何とも言えない高揚する気分に
ちょっと同居人をダメにする女になりかけている感じの島風ちゃんは今の幸せを噛みしめるのでした。
「そうだ、深海棲艦たちが戻って来てくれれば私も軍に復帰でk」
「ヤバい、末期だよこれ」
2016/03/20