放課後。

時間はもう帰宅部の人間は全て帰った後だろう、外も冬と言うこともありすっかり暗くなってしまった。

当然、舞や佐祐理さんも、そして今日はとりわけバイトもないらしいが北川も帰ってしまっている。

名雪は陸上部で練習だが、日も落ちたことだしそろそろ終わりとなるころだろう。

そんな状況だから俺は今校舎に一人。

辺りを歩く人もなく、明かりの灯った廊下にただ佇んでいた。

窓から外の様子を見ようにも夜の外と電灯の点いた校舎の中、近寄って見でもしないと廊下の姿が窓ガラスに反射して校庭のことは解らない。

もっとも、今は校舎の外には用はないのでどうでもいい話だ。

今、俺の前には美術室がある。

ココに来るまでに随分と時間がかかったのは内緒だ。

芸術の授業は選択式だったので名雪に引張られて音楽を選んでいた為美術室の場所など知らなかったわけだ。

そんな身分で美術室を探そうとした俺に乾杯。

てーか、普通特別教室って近いところに固まっているものだろう?

なんで音楽室と中庭を挟んで反対側の棟にあるんだよ。

あっちの棟ばかり調べて随分時間を食ったじゃないか。

……しかも誰も通らないから道を聞く相手もいないし……。

迷って辿り着いただけにこんな時間になってしまったので当然辺りも、そして中も人の気配がない。

少し考えてから恐る恐る扉を開けてみるが、やはり中は誰もいなく電気も点いていない有様。

暗い美術室は絵画の中でも人物画や石膏像がぼんやりと浮かび上がり背筋が寒くなってくる。

ありえないと思いつつ超常現象うんぬんを考えたくもないのに考えてしまう。

バカバカしい、と考え改め頭を振って目的を達成できなかった美術室から足早に昇降口に向かう。

目的。

それは香里に会うことだったのだろうか。

俺が美術室に向かう理由など現状それしか見当たらない。

自分でもよくわからない、考えがまとまらないまま来てしまったのだ。

実際ココで香里に会って何を話すつもりだったのか。

栞について今更ながら問い詰めるつもりだったのか、

それとも、

昼の終わりに佐祐理さんに斉藤が香里の部活を調べ上げたことを伝えたら逆ギレして『ガセじゃないかちゃんと調べて裏とって来なさいっ』って言われたからなのか理由は甚だ謎である。

……あー、なんだ、その。

……佐祐理さん、敵に回すと怖そうだからなぁ。

そんなことを考えて昇降口を抜け学校を後にする。

なんとなく、そのまま家へ帰る気も起きずにちょっと寄り道を考えて商店街に向かうと街灯の明かりの中に見知った顔がいることに気が付く。

いや、顔って言うか羽だ。

「あ、祐一君っ!」

ぱたぱた、そんな擬音語が似合う走り方で力いっぱいこちらに向かってくる。

勢い余って転ばないか心配になってしまうほどに元気一杯だ。

「よぉ、あゆ無駄に元気そうだな」

「無駄にってのが気になるけど、ボクはいつでも元気だよ」

俺の挨拶に言葉は文句を言っているようだが表情は明るく、こちらまで元気になるような笑顔を振りまいてくれる。

「しかし、こんな暗くなるまで何してたんだ」

冬は夜になるのが早く、うかうかしているとすぐに真っ暗になる。

そんなわけで時間的には早い時間に既に外は夜の闇に包まれてしまう。

とはいえ女の子が一人夜道をふらふら歩いているのはあまり感心できたものではない。

まぁ、あゆにはあゆなりの事情があるのかもしれないが。

と、そこまで考えてそのあゆの事情というものを思い出す。

「あ、アレか、探し物してるって言ってたな確か、今日も探してたのか?」

質問にちょっと落ち込んだようにこくり、と頷くあゆ。

以前香里と一緒にあゆに会った時に聞いた話だ。

探し物をして商店街をぶらぶらするあゆ。

問題はその探し物が何であるのか本人も分かっていないということ。

奇妙な話だが、大切なものだということだけを憶えていてそれが何かはまったく憶えていないらしい、それでもめげずにあゆは日々商店街を探しているようだ。

その探し物の話を聞いたあの時は確か、香里も巻き込んで一緒に探したんだっけか、結局手がかりも見つからなかったけど。

また別の日にも舞と佐祐理さんをお共に同じようなことをしたんだがココでも進展はなかったんだよな。

「落ち込んだ表情をしているところを見ると、相変わらず何を探しているかも解らないといったところか?」

「うん……大切なもの、なんだけど」

「厄介、だな」

そうだよね、と他人事のように聞こえる返事をするあゆだが表情は曇っていて小さく漏れるため息が思ったよりも悩んでいたことを教えてくれる。

しかし、その後ぱっと表情を変えて笑顔になって今日の成果を話し出した。

「でもね、今日も手がかりはなかったけど、香里さんがまた手伝ってくれたんだよ」

「……香里、が?」

「うん、探し物しながら歩いてたらちょうど暇だからって声かけて来てくれて、半分は雑談だったけど楽しかったよっ」

「へぇ……」

まぁ、実際香里は優等生の委員長タイプだといって差し支えなさそうな雰囲気を持つ女だから面倒見はよさそうだ。

あゆは同い年だが見た目と言動がコレなのでつい面倒見たくなるのかも知れない。

話を聞くとどうやら以前にも、俺と香里があゆと出逢った後日あゆが商店街をうろうろしているときにバッタリ会って一緒に散策したためそれなりに仲良くなったらしい。

人の縁ってのは不思議なものだよな。

なんだかちょっと変ったコンビだが、ある意味名雪と香里のコンビに通じるものがあるからコレはコレで合っているのかもしれない。

ま、でも正直、コンビうんぬんより俺が気になる部分はそんなことではなくてだな。

「つーか、お前と香里、2人でどんな会話するのか非常に気になるのだが」

「うん?」

「いや、ほらお前らってなんか共通点少なさそうだしな、話題ってあるのかと」

なんとなく、2人はキャラが違いすぎると思い訊いてみた質問にあゆは『ん〜』と小首を傾げて一つ一つ思い出すように香里との会話を語って聞かせてくれた。

曰く、商店街の裏話だの(香里談)、どこの店が美味しいだの(あゆ談)。

名雪は実はこんなヤツだの(香里談)、祐一は昔からあんなヤツだの(あゆ談)。

他にもいろいろと話は出来るそうで、結局話なんてものは語り手聞き手がいれば問題なく進んでいくわけだ。

最後のがどんな話をしたのか嫌に気になるし、その一つ前のもちょっと聞いてみたかったりするが、それはさておき嬉そうに語るあゆを見る限りなんだかんだであゆと香里は不思議と仲がよさそうだ。

そんな感じで香里とこんな話をした、と語ってくれるあゆは今日の話題を笑顔で締めくくりに持って来たのだった。

「で、今日聞いたんだけど、香里さんって美術部に顔出してるんだってね、なんか絵が描けるって羨ましいよねっ」

……倉田家はあゆにも負けたのか。

 


でも、やっぱりまいがすき☆


 

朝。

今日も清々しい朝だ。

この後名雪を起こさなければならないと言うのがなければとても素敵な朝だ。

昨日と同じで早く起きてくれないか、と悩んでいると秋子さんが朝食を用意してテーブルにおいてくれる。

礼を言って朝食であるパンをかじって名雪について考察。

名雪は朝遅い。

かといって別に夜更かししているわけではない。

不思議な話だが名雪は夜が早い、いや、早すぎって言っても差し支えないレベルだ。

良い子の9時就寝とまでは言わないがそれに近い状況で床に就く。

だと言うのに不思議なことに朝はなかなか起きてこない、寝起きが悪いとかそんなレベルじゃなくとにかく起きない。

低血圧、なんだろうか。

ふと見ればキッチンでまだ何かを作っている秋子さん。

そういえば秋子さんは朝弱い感じがなく、記憶にある分には俺より遅く起きて来たこともない。

名雪も成長すればこうなるのだろうか?

……あ、無理、想像できん。

ふぅ、と自分の考えにため息をついて2枚目のパンを手に取り、再び隅から隅までバターを塗りたくる。

まだ時間に余裕はあるので名雪を起こす前にしっかりと食事を取っておこうと心に決めたのだ。

実際名雪の生態が解っても寝起きが良くなるわけでもないだろうし、現実問題解決したいところは例の美坂問題だしな。

なんだかんだでばたばたと美坂姉妹のことを調べたりはしてはいるが結局香里と栞のことに関して進展といっていい進展は見られないんだよな。

北川が無意識かなんか知らんが栞を落としかかっていることと香里の部活が判明したということろか。

正式にはどこにも所属してないと秋葉さんが言ってたからなんとも微妙な話ではあるだろうが、斉藤とあゆの話から美術部に顔出してるのは間違いないだろう。

っていうか、あゆが香里と会ってたのは驚きだったな、なんだか仲いいみたいだし。

……あれ?

考え事をしていて突如沸き起こる違和感。

昨日、学校の帰り際香里の部活を確かめようと美術室によって、会うことかなわず諦めて寄り道して帰ろうと商店街へ向かった。

その道で俺はあゆに出会ったはず。

香里の部活のことをあゆが聞き出していたという事件があったくらいだ、それが幻だったはずもない。

けど、どうして、

 

俺はあゆと別れた記憶がないんだろう。

 

あゆと話をしていた記憶はあるし、一人で家に向かって帰って来ている記憶もあるのに何故かあゆと別れた記憶と言うのが曖昧だ。

「どう思う、マコト?」

単に俺が寝ぼけているだけかも知れない、そんな思いを持って近くにいたマコトに意見を聞いてみる。

「くぅん」

「そうか、やはり、あゆ小さいから視界から漏れていたんだな」

「ぷ」

後ろから明らかに失笑と解る音が聞こえてくる。

犯人は誰か、と半ば解っているにもかかわらず勢いよく後ろへと振り返るとそこに一人のお母さん。

思わず笑いが漏れてしまった、そんな感じでバツが悪そうに苦笑してる秋子さんと目が合う。

なんか一生懸命『そんなこと言ってねぇよ』とでも言いたげに首を振るマコトは気のせいだろうということにする。

「祐一さん、それはあゆちゃんに悪いですよ」

「笑いながら言われましても」

苦笑しながら形ばかりの抗議をしてくる秋子さん。

もっとも、抗議の理由は大方あゆのことではなく、自分を笑わせたことに対するもののようだ。

お互い苦笑した表情で顔を見合わせ、一旦おいて普通に笑い出そうとしたその時。

「おはようございます……」

「なっ!?」

「なっ!?」

キッチンのドアが開かれ、ありえないと思っていた声が響く。

俺も秋子さんも表情が固まり、勢いよくドアの方に振り返るとそこに一人の少女の姿が。

「名雪っ!?」

「ふ、二日連続っ!?」

自分で起きて来やがった。

「ゆ、祐一さん何かしたんですか!?」

慌てふためく秋子さんのレアな姿。

「まさか、俺にそんな偉大な力はないはずです!!」

自分で言っててなんだが名雪を起こすのは偉大なことなのかよ。

「では何故!?」

「きっと……」

「きっと?」

「鬼の霍乱です」

何言ってんだ俺。

「なるほど」

納得するのかよ。

「酷いこと言われてる……」

図らずも見事な秋子さんと俺の連携で寝ぼけ半分でキッチンまで来ていた名雪も反論のために目を覚ましたようだ。

狙ったわけでもないのだが、なんだか上手く事が運んだものだ。

名雪はその後滞りなく食事を取って学校へ行く準備をして、現在俺と2人で登校中。

なのですが。

「いや、やはり名雪は名雪だったわけだな」

「悪いとは思ってるんだよ」

なんで滞りなく食事とって準備して時間ギリギリになるんだお前は、ある意味才能だぞそれ。

やはり昨日はマグレだったかと心の中で納得しながら小走りで学校に向かう。

このペースで日々を送っていたら健康になりそうだ。

いい加減朝に寒さを気にするのも面倒になって来る。

ぴーん。

そうか解ったぞ、雪国の人間は寒く思うのが既に面倒になってしまったから寒さに強いんだな。

などと脳内俺理論を展開させていると校舎と少し急ぎ足で学校に向かう生徒が見えて来る。

「なんとか間に合いそうだね」

笑顔で言いながら動きを走るから歩くに移行させる名雪。

なんだかんだでギリギリの時間感覚に慣れている我等が陸上部部長、もとい滑り込みセーフ多発の盗塁王の言うことだ、もう歩いても大丈夫なんだろう。

俺は乱れた息を整えながら名雪に合わせて歩調を落ち着かせる。

流石に名雪は陸上部だけあって余裕のある表情で、すぐに呼吸を整えいつも通りのボケボケした笑顔になって昇降口へと向かった。

そんな名雪の後を追って校舎に入ろうとしたのだが、俺は見覚えのない男子生徒に声をかけられることとなった。

身長俺と同じくらいで優等生のような当たり障りのない髪形だが、ぱっ見優男にも見える容姿、だがファッションセンスもなかなかのインテリ眼鏡をかけているところからセンスも、知的な感じも漂わせる男だ。

記憶にないってことは石橋組の生徒ではないのだろう。

ちょっと斜め後ろに大人しそうな女生徒、髪を首の後ろでリボンで一旦まとめて肩甲骨の辺りまで流しているおっとりした感じの女生徒も控えるようにいたがそっちも記憶にない。

むむ、何者だこいつは。

「水瀬さんと一緒に登校して来たということは、君が相沢祐一くんだな」

おお、話し方もすかした感じでますます知的優男っぽい。

てーか、俺に用なのか?

「よく解ったな、名雪はそんな有名なのか?」

まぁ、名雪は我がいとこながら美少女の類といって問題なさそうだし、陸上部の部長としても校内では知名度もあるだろう。

それにくっついてる俺が何者か気になる名雪のファンだろうかこいつは。

「いや、水瀬さんも有名ではあるが君は自分のことをもっと考えた方がいい」

「は? 俺?」

ちょっと斜に構えて偉そうに言うメガネくんの言うことに一瞬何を言いたいのか解らず首を捻る。

それを見て当のメガネくんはわざとらしくため息混じりに細かく解説してくれる、いいやつだ。

「いいかい相沢君、君はあんな放送で2度も呼び出されたんだ、しかもあの2人にだ」

ああ、そうだな、アレは全校に響き渡った放送なんだよなやっぱ。

「ただでさえ有名なあの2人に放送でわざわざ呼び出され、しかも陸上部部長のいとこで最近転校してきたばかりと来ている、これが有名にならなくてなんだと言うんだ」

芝居がかった仕草で説教するように言い放つ、とはいえ不思議とこの男はこんなすかした態度が似合う。

そして彼の言うことも納得だ、確かにアレはインパクト強いだろう。

しかもあの2人に名指しで呼び出される転校生、はっきり言って只者じゃないという評価を受けるだろうな、迷惑な。

「まぁ、それでお察しの通り俺が相沢祐一だが……名指しにして何か用か?」

「ふむ、確かに君に用だが別に相沢祐一であることが問題ではない、ただ僕が気になっただけだったから君の名前に関してのことは些細な問題だよ」

俺の質問に目の前の男子生徒は相変わらずすかした、少し偉そうな態度を見せ右手の人差し指でくいっとメガネの位置を正して何言ってるんだかピンと来ない答えを返す。

気取ってないでしっかり話せ。

立ち振る舞いが一挙動ごとに気障っちい雰囲気で、話す言葉も仰々しく嫌味な風にも聞こえてくる。

悪役キャラかコイツは。

そんな感想を心の中で目の前の悪メガネにつけていると当のメガネは淡々と言葉を続ける。

「解ってるのかい、転校してそれほど経ってもいないのにほぼ毎日遅刻ギリギリで走って登校してくるそうじゃないか、そちらの方でも既に有名なのだよ君たちは」

たち、は名雪のことだろうな、そして原因も名雪でしかないわけなんだが。

「間に合っているとはいえ、そんな状況がいいわけないだろう、他の生徒にも示しもつかんし遅刻してないのが不思議という状況で毎日毎日……」

ちくちくと、こちらを責めるようにバカにするようにまくし立てる、なんか腹立ってきたな殴ってやろうかコノヤロウ。

時間こそ短いが内容の詰め込まれた嫌味な台詞がぽんぽん飛び出してくる。

コイツの語彙は大したものだが喧嘩を売ってるようにも聞こえてくるから問題だ。

「あ、おはよう久瀬会長」

「ああ、ぅうん、水瀬さんおはよう」

いい加減反論してやろうと口を開きかけたところで横から先に昇降口に向かっていた名雪が戻って来て目の前の男に挨拶をした。

途中で立ち止まっていた俺が気になったのだろうか。

男も名雪の挨拶に腕組みをしながら律儀に答える。

というか。

「会長?」

「うん、会長さん」

「何のだよ」

「えっとね、香里が言うには『倉田会長に振り回される生徒を守る会の会長』さん」

「生徒会長だっ!!」

名雪の渾身のボケを受けて必死に反論する久瀬会長とやら。

とりあえず、情報として解ったことは目の前の男の名前が久瀬で現生徒会長、でもって嫌味な性格ではないかというところか。

そんな人に喧嘩売ってるような性格で生徒会長なんて務まるのかね。

「まったく、水瀬さん君もだ、本当に毎日遅刻ギリギリで……部長になったから少しはマシになるかとも思っていたのにちっとも変らない」

……名雪、解っちゃいたが本当に昔からこのペースだったのか。

「こんな毎日が普通だと思っていたら間違い……」

「ごめんね、努力はしてるんだけど……」

「……いや、まぁ、なんだ、その努力を努力で終らせないように、だ」

コイツ、嫌味な台詞吐くわりに今名雪の申し訳無さそうな表情に押されて言葉を柔らかくしたぞ。

「うん、頑張るよ」

「ああ、君は結構有名なんだ、もう少し模範的な行動を取ってもらいたいものだな」

「はいっ、久瀬会長」

「……う、うむ、もう結構な時間だ、ではコレで失礼」

なんてーの?

嫌味なヤツを気取って難癖をつけてみたが屈託のない名雪の笑みにたじろいでキャラを保てなくなってしまったとかか?

久瀬会長とやらが足早に校舎に向かって行った後、何故かその場に残っていた会長のお付きのようだった少女が口を開く。

「水瀬さん、相変わらず久瀬会長の言葉を普通に受け取るわよねぇ」

話し方もなんとなくおっとりだ。

「まあね、久瀬くん言い方あんなんだけどいい人だから」

「確かに、会長として生徒の風紀にも気を配ってるんでしょうけれど、わざとああいう言い方したりするからねぇ」

「久瀬くん、悪役キャラ似合わないのにね」

名雪と恐らくは生徒会の女生徒と2人話しながらため息。

話を聞くと女生徒はやはり生徒会執行部の人間で、名雪に関しては例の久瀬とは以前同じクラスだったこともあったり、

現在も陸上部も部長、生徒会長ということで顔見知りの仲らしい。

で、肝心の久瀬情報だが、

本人は悪徳会長を気取って偉そうな口調をあやつりあんな感じでやってきているらしいが、会長になる前から生徒会にいて前会長の佐祐理さんの無茶のフォローに走り回ったと忙しかったらしい。

会長となった現在も嫌味な言い方だが言っていることは至極もっともで相手のことをちゃんと考えての台詞だということなので人望があるらしい。

それを本人が不満に思っている辺りがなんとも……とは生徒会女生徒の感想だ。

「会長は頑張って悪役ぶってるのだけれど」

「久瀬くんいい人だってみんな知ってるしね」

「だから美坂さんに『おせっかい番長』なんてあだ名つけられるのよねぇ」

「でも久瀬くんって偶に悪者扱いしてあげると嬉しそうなんだよね」

「そこで嬉しそうにするあたりが悪役らしくないのよねぇ、まぁ結構可愛いヤツなわけですが」

本人いないから2人の女の子言いたい放題。

まぁ、コレはどう聞いても悪口じゃないんだろうが、本当に悪役をやりたいとしたら久瀬には悪口になるのかもしれない。

なんていうか、まだ今日会ったばかりで嫌味っぽいことしか言われてないが……ちょっと久瀬に同情するよ、佐祐理さんのフォローで走り回ってた部分も含めて。

なんだかこの学校は本当に平和のようだ、そしてきっと今日もなんの問題もなく平穏に過ぎていくのだろうな。

澄んだ冬の空を見上げながら、女の子の雑談を傍で聞きながら考える。

まぁ、アレだ、俺の思うところは今ただ一つ。

いや実際この感想はタイミングを外してしまってココまで引張ったのだが……。

香里、お前実はボケだろう。

 

つづく


あとがき

やはりしおりんの方がツッコミなのかっ!?

あ、25話目だ。 ちょっとした節目ですねぇ。 頑張るなぁ俺。

 

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