「と、いうわけで、どうだ香里?」

「……前振りも無しに随分と突然ね、相沢君」

「細かいことは気にするな、で、どうだ?」

「だから、何の話か聞いてるのよ」

「言ってなかったか?」

「聞いてないっ」

「そうカリカリするな、カルシウム取れよマイフレンド」

「……相沢君、あたしは話を促してるんだけど?」

「……お、おう、まぁ、アレだ、とりあえず香里も一緒に昼メシどうだ?」

「それって……」

「まぁ、アレだ、な」

「先輩や……あなたの言うところの可愛い後輩達と?」

「もっと言うと北川まで居るぞ」

「……そうね、遠慮しとくわ」

「……そのタイミングで言うと、北川が嫌だから避けてるように聞こえるぞ」

「ふふっ、そう受け取って貰っても構わないわよ」

「そのまま受け取るのは北川があまりに不憫なので別の理由で考えておくぞ」

「じゃあ、よろしくね」

昼休み。

最早恒例となってしまった階段踊り場、通称例の場所での昼食会に香里を誘ってみた。

すっかりメンバーとして定着した北川を先に行かせて、まだ教室にいた香里を捕まえて話しかけたのだが、あえなく惨敗。

要は栞に会いに行け、と言っているようなものだから誘いに乗るのは難しいと思っていたので実際問題意外でも何でもない。

でも、以前の対応よりはマシな状況だろう。

少なくとも完全に突っぱねる態度ではなくなったわけだ。

先日の香里の話を聞いて俺もいろいろ考えた。

栞の体に関しては、流石にどうにかなるものではないだろう。

いや、何か出来ることがあるのなら何とかしてやりたいし、2人の力になってやりたい。

でも実は実際のところまだ実感が沸いていない。

そんな状況で昨夜はいろいろと考え込んで寝るのが遅くなったわけなのだが、

その中で、今俺に出来ることを考えてみた結果がコレ。

『なんとか栞と香里を仲直りさせよう』

だ。

いろいろと考えすぎてもう、どれが理由で何が決め手となってその結論になったのかは自分でもはっきりとはしないが、

とりあえず、この目標で問題ないと俺自身納得しているのでいいとする。

香里が言った通り俺は『諦めが悪くて足掻く』というのがあってるのかもしれない。

だから、姉妹の仲をなんとかしようと足掻くことにしたのだ。

昨日の、俺に栞のことを話してくれた香里の態度、そして今日のこの態度から少なくとも香里も少しは歩み寄ろうとしてるんじゃないかと思う。

まぁ、俺の勝手な思い込みなんだがな。

けど、そうだとしたら何かのきっかけがあった方が香里も栞に歩み寄り安いはず。

少しでも俺の動きがそのきっかけになってくれればいいと思うわけだ。

とりあえずはあまり無理強いしても反発が増えるんじゃないかと思うので今日のところは……

いや、今はこの辺にしておく。

「でも、正直ちょっと意外だったわね」

俺が香里を誘うのを諦めて教室を出て行こうとしたところで、追いかけるように香里から少し楽しそうな声で話しかけられる。

「あ、食事に誘ったことか?」

「ううん、それむしろ相沢君らしいわ、ただまぁ、あまりに予想通りの行動だったんで驚いたけどね」

……俺の一晩悩んで出した結論は、香里から見れば当たり前の行動だったのかよ。

俺、そんな解りやすいかね。

俺の落ち込んだ表情を見て、その姿も予想通りだったとくすくす笑いながら話を続ける香里。

ちくしょう、今に見てろ。

「で、意外だったのは北川君ね」

「北川?」

いったい何がだ? と表情と視線で問いかけると、香里は悪びれもせず『栞のこと』だと答える。

いや、むしろ俺にはお前があっさり栞の名前出してくることの方が意外なんですが。

「ええ、栞の相手をするのは相沢君だと思ってたから」

「相手って、ああ、そういうことか」

「昨日も、なんだか嬉しそうに出かけたからてっきり相沢君達と、もしくは相沢君だけと遊びにいったんだと思ったのよ」

で、ちょっと後をつけてみたら相手が北川だったので驚いた、ということらしい。

確かに、北川がこっちに巻き込まれなければ、栞の話し相手などは俺がやっていたかもしれないし、

一緒に遊びに行くこともあったかもしれない。

「でもまぁ、そのへんはホラ、北川ああいうやつだからな」

「……ああって?」

俺の説明に小首を傾げて不思議そうな顔をする香里。

「あれ? なんでも面倒見がよくて下級生に人気、だそうだが?」

「へぇ、そうだったんだ……」

「なんだ、その初めて聞きましたって感じの返事は」

「いえ、だって初めて聞いたから」

意外ね、って感じで頬杖をつく。

「……そうなのか?」

「ええ、そもそもなんで相沢君がそんなこと知ってるのよ?」

「ああ、秋葉さんに聞いた」

「納得だわ、なんか事情通よね、彼女」

どうやら、香里は北川の評判を知らなかったらしい。

もしかすると本当に香里の中で北川の存在はクラスメイトより上の存在ではないのかもしれない。

っていうかないんだろう。

現に今も、北川の評判を知って不思議そうな、腑に落ちないような顔をしていた。

「ちなみに、香里は北川のことどう思う?」

「……栞が楽しそうだしね、アレでいいんじゃないかしら?」

そーいうこと訊いたんじゃないんだけどな。

もっと解りやすく訊いた方がいいんだろうか?

「妹を任せられる、信頼できる男ってことか?」

「面倒見がいいんでしょ? それに気のいい人だってことは同じクラスに暫くいたんだしそれなりに解ってるつもりよ」

「……じゃあ、なんだ、香里的に異性として北川はどう見る?」

まぁそれなりにいい印象を持っている、もとい悪い印象を持ってない、と言う感じだったんでもうちっと解りやすく、

っていうかほとんど直球で訊いてみたのだが、

なんだか香里は驚いたような表情を浮かべると、暫く沈黙し、その後真顔で質問に答えてくれた。

「……考えたことなかったわ」

北川、どうやら問題外。

「そ、そうですか」

「でもそうね、強いて言うなら」

「言うなら?」

「『いい人』で終わりそうなタイプ?」

北川、お前、香里諦めろ。

ダメだこりゃ。

 


でも、やっぱりまいがすき☆


 

「舞踏会?」

「ああ、そうなんだこの学校にはそういうイベントがこの時期にあってね、まぁ参加者を募っていると言うわけなんだよ」

「で、俺に出ろと?」

「そういうことだ、毎朝遅刻寸前に水瀬さんと走って登校してくるわ、転校早々放送で舞さんに呼び出されるわと有名なキミだ、せいぜい見世物になってくれると嬉しいな」

「で、田中さん、久瀬会長の本音は?」

「あ、会長は相沢君が転校したてで知り合いも少ないだろうからこういうイベントを期に友達を増やすといいんじゃないかと言ってるのよぉ」

「断じて思ってないからな、そんなことっ!」

昼食。

例の場所での一コマ。

俺は香里に構っていてちょっと遅れて到着したのだが、

いつものように連れてこられたのか自発的に来ているのか解らないが栞の姿を見つけて俺は心が騒ぐ。

騒ぐがどうしようもない、それは昨日もたっぷり考えた。

みんなに栞のことを言おうかどうしようかも悩んだ。

結論は出ないが、とりあえず今ココでは言えない、言えるわけはない。

だから知っていると言うことを悟られないように平静を装うが、やはり本人を前にするといろいろ考えてしまう。

それでもなんとか暗くなる表情を隠し、辺りを見渡して先に行かせていた北川や舞とか佐祐理さんに挨拶しようとすると、

どういうわけか、久瀬が居た。

先日佐祐理さんに『久瀬ゴンザレス』と名付けられていた現生徒会長様だ。

お付の田中さんもお付としての面目でもあるのか、当然のようにこの昼食会に顔を出していた。

どうやら佐祐理さんが連れて来たらしいのだが、いったい何の目的だか。

そんな中、久瀬は自分の弁当をつつきながら数日後に迫ったこの学校のイベントの説明をしてくれていた。

言い方は相変わらずイヤミっぽいというか、悪役ぶってるというかそんな感じなのだが。

「生徒会長って本当にこういう人だったんですね……」

とは天野嬢のお言葉。

一年生の中でも久瀬の噂は流れていたらしい。

生徒会長に就任してから暫くはよく状況を知らない一年生の間では悪者だと思っていた連中もいたそうだが、

現在はそれを払拭するような『お人好しで照れ屋説』が流れていて、今まさにイメージチェンジの真っ最中らしい。

久瀬、無念。

と、言うわけで本日の参加メンバーはいつもの舞、佐祐理さん、俺、栞、北川に続いて今日も連れてこられた天野美汐嬢。

そして俺の知る中では初参加の久瀬氏と田中さん。

実際問題大所帯だ。

珍しい事態に階段の踊り場が狭く感じるという始末。

そんなわけで男性陣は踊り場から屋上の扉に続く階段に腰掛けるという姿になっている。

佐祐理さんの豪華弁当は遠ざかるが、まぁこっちに分けてくれてるし問題ない。

……よく考えたら無償で頂いてるんだよな、今度何かしなくちゃな。

ともあれ、そんな状況で説明を受けたイベント『舞踏会』。

学校のイベントにしては洒落過ぎている。

どこの迎賓館だココは(←偏見)

「で、それいつなんだ、北川」

「ああ、明後日だっけ久瀬?」

「そうだ、明日は準備があるから午後からは休校になる」

「へぇ、そりゃラッキーだな」

どうやら久瀬と北川は顔見知りらしく、それなりに普通に臆することもなく当たり前のように会話をしている。

きっとどっちもお互いがお人好しだと知ってるんだろうな。

「ってーか、明後日か随分急だな」

「おいおい、祐一くん、校内あちこちに告知ポスター貼ってあったでしょうが」

ずびし、と舞にチョップで突っ込まれる。

そうなのか? と首を傾げると本当に気付いてなかったのかと呆れられるし北川にはここ暫くの体育の授業に社交ダンスが加わっていた事を突っ込まれる。

そういや、そんな授業もあったが、この為だったのか。

と、今更ながらに気付いた俺を周りの一同が呆れ返る。

いや、そのやり取りを見ていた佐祐理さんだけにはその一連の流れが笑いのツボに入ったのか爆笑された。

むぅ、ちょっと不愉快。

そんなことを思っていると比較的俺達の近くにいた田中さんがこちらに向き直って『舞踏会ポスタぁ』なんて気合が入らない声で四次元ポケットから秘密道具を出すような言い方をして問題のポスターそのものを広げて見せてくれる。

っていうか、持ってたのかアンタ。

それ以前に今それどこから出したアンタ。

「準備いいですね、田中先輩……」

「ふふふ、こんなこともあろうかと思ってねぇ」

実際誰もそんなものを持ってきていることに気がついていなかったようで、代表して栞がツッコムが、むしろ田中さんは誇らしげに対応。

なんか結構大した人だ。

「と、いうわけで、ここにいる人みんな参加、ってことでファイナルアンサぁ〜」

若干間延びした声でこの場を仕切って締める田中さん。

どうやらここにいる8人は済し崩しに舞踏会参加決定となってしまったらしい。

まぁ、生徒会の2人は参加当然として、

北川は諦めているのか初めから参加のつもりだったのか二つ返事で流す。

驚いたのが天野嬢で『えっと……』なんて考えている。

「えっと、会長、お聞きしたいんですけど……」

と、そんな天野の隣で栞がおずおずと久瀬に話しかける。

久瀬も、悪役ぶっているが別に不条理なことはしないやつなので栞の話を促して聞こうとする。

「あの、私……ずっと学校に来ていないんですが――」

参加、していいんでしょうか? と続けようとしたのだろう。

しかし、そこまで行くまでに久瀬が先に口を開いてぶっきらぼうに答える。

「普段学校に来ないで行事をサボっているんだ、こういう時くらい参加してもらいたいな」

言い方は確かによくないかも知れないが、ちょっとそっぽを向いて言う辺りが久瀬の憎めないところなんだろう。

そして小さな声で『まぁ、体調に問題無い程度でなら』と付け加えてる辺りももう只のいい人だ。

それを見て栞も嬉しそうに返事をして参加の意を伝え、北川となんか視線で会話してるところを見ると、昨日辺りに参加しようと言うことで2人話していたのだろうか?

ふと見ると佐祐理さんがそんな2人を見てちょっと驚いたようだったが満足そうな笑みを浮かべていた。

ああ、もしかして、この話題を持って来てこいつらを舞踏会に参加させるために久瀬を呼んで来たのだろうかこの人は。

ただ、流石にもう2人で出る気になっていたのは意外だったってところだろうか。

なんだかんだでやっぱりいい人なんだよな、佐祐理さんも。

「じゃあ、あたしたちも気合入れて参加しますか、佐祐理」

「そうだね、今年もパーっと……」

「いえ、御二人は無理に参加しなくていいです」

「……ゴンザ、冷たいよ」

「まったく、お姉ちゃんはそんな冷たくなるようにゴンザレスを育てた憶えはないわよ」

「誰がゴンザですかっ! それに佐祐理さんに育てられた憶えないからっ!!」

あ、コイツ、前は倉田さんって呼んでたのにココでは名前で呼ぶんだ。

そういや、2人幼馴染だって言ってたからむしろそっちが自然なんだろうな、きっと人前で悪役ぶっていたから格好つけて苗字で呼んだとかそんなとこか。

「まったく、去年の舞踏会で2人が何したか考えたらわかるでしょうに、いや本当今年は勘弁願いますよ」

疲れたように、すでに悪役ぶることも忘れて本音を吐く久瀬。

何したんだ、2人、なんて思ってるとあっさり本人達からその回答が得られる。

「あー、去年、去年ねぇ、アレは楽しかったね〜舞」

「おうよ、佐祐理と2人できらびやかなドレスで舞台上がって漫才したわねー」

おい、お前ら。

「あははー、会場大爆笑、すっかり私達のトークショーだったわよね〜」

「いや、もうコレでもかってくらい笑いに包まれた舞踏会だったわね」

悪魔だこの2人。

2人は当時の事を思い出し、楽しそうにその武勇伝を語る。

知っている田中さんと北川はそれに苦笑、久瀬はため息をついてうなだれる。

知らなかった栞と天野嬢は唖然として聞いている。

自分の弁当を片付けた久瀬は疲れた表情で俺の肩をぽんと叩くと、小声で当日はあの2人を頼む、と話しかけてきた。

「ちょっと待て、いくらなんでも俺1人じゃ手に余るだろ、アレは」

「そうは言うが実際問題相沢君が一番あの2人の相手を出来ると思うからな」

「久瀬はどうなんだ? 当日はあの2人どうにか出来ないのか?」

「いや、一応生徒会が執行委員会なんでそちらだけに構っていられるものでもないし、何より……」

僕ではどうしようも出来ない、と呟く久瀬の姿はどこと無く哀れで、ああなんか手を貸してやろうかな、なんて気になってしまった。

しかし、しかしだ、相手はあの2人なのだ。

「でもなぁ、なんとかしたいが相手が相手だろ、俺も結局振り回されてるからなぁ……一弥氏に応援頼んでみるか?」

「ふむ、いや、一弥だとなんだかんだで佐祐理さんの弟、向こうにつくことは無いにしても、きっと戦力にはならない」

いやに言い切る久瀬。

そう言っちゃ一弥に失礼だろとも思うが、『実際見てきてるからな』なんて言われりゃ言い返す術もないわけで、

「……わかった、努力はしよう、努力はするが久瀬よ」

「なんだ?」

「骨は拾ってくれ」

「すまん、恩に着るぞ相沢」

がしっと硬い握手をする俺と久瀬。

昔から佐祐理さんに振り回されながらも頑張って来た男と、現在佐祐理さんと舞に振り回されながらも頑張る男。

今ココに一つの友情が生まれたのだった。

「あの、すみません、よろしいですか?」

場が少し落ち着いたのを見計らってか、天野嬢が小さく右手を上げて田中さんに向かって質問を投げかける。

なんか天野って礼儀正しい娘さんだな。

全員食事も終わっていたのでその声にはじかれてそちらを向き、一瞬視線が集中したことに嬢はひるんだが気を取り直してそのまま言葉を続ける。

「参加、ってことですが私はそのドレスとかは持ってないのですけど」

どうやら参加は正装であるらしい。

まぁ、舞踏会なんていうんだ、その辺は当然だろうと思うが、よく考えれば俺もそんなもん持ってねぇぞ俺。

なんと、参加出来ないじゃないか。

「その辺は問題無いわよ、ウチの舞踏会は貸衣装屋さんも絡んで来てるから服なんかは心配ないわよぉ」

「そうだな、学校の行事なんて言っているがココ最近はすっかり街の『ダンスパーティ』イベントになって来ていることもあって貸衣装屋とも連絡は済んでいる」

どうやら生徒会2人の説明ではそのダンスパーティには街の社交ダンス教室の教師や生徒の人たちも参加して来たりで、ダンスを教えて貰えたりもするらしい、

またそういう場のマナーなんかの実践練習にもなるわけなので学校の生徒や教師だけじゃなく、街の人たちも参加可能になっていて半分街のイベントになってしまっているそうだ。

生徒の貸衣装代に関しては生徒会費でまかない、クリーニング代だけ出してもらうという制度をとっているとか。

また学校側に市から助成金まで出ているらしく、商店街にある店もいくつか協力体制をとっていてもう一大イベントの様子。

本当、一つのお祭りだ。

そんなわけで、衣装の方は貸衣装屋がスタンバイしているので問題無いそうだ。

市のイベントになりかかっているそんな状況なら貸衣装足りるのか不安になって来るが、

そこはもう恒例のイベントになっているものだから貸し衣装と言わず自前で持っている人が結構いるとかで数が足りなくなる心配なんてものはないらしい。

それなら俺も天野も衣装のことに関しては深く考えなくてよさそうだな。

「ま、詳しくはコレに書いてあるからねぇ」

田中さんがその旨を詳しく書いてある先ほどのポスターを天野嬢と俺に渡す。

っていうか、田中さん2つもポスター持って来ていたのかよ、侮れない女だ。

俺のそんな呆れたような驚いたような表情に気がついたのか、田中さんは妖しく笑うと左手の人差し指をぴっと立てて語りだした。

「ふふふ、実は田中は未来が解るのですよ、何しろ……」

「下の名前『未来』だもんね、田中ちゃん」

「ああ、もう、先にオチ言っちゃヤですよぉ舞先輩」

折角いい感じにネタを用意したのに舞に邪魔される田中未来さん。

また1人こうしてフルネームが発覚。

そういや聞いてなかったんだよな。

そこから考えれば俺は久瀬のフルネームも知らないんだな、面識はあったのに。

まぁ、折角こうして友人にもなったわけだし、なにより自分達の生徒会長だから名前を憶えておくべきかもしれないな。

「そういや、久瀬ってフルネームなんてんだ?」

「ああ、そう言えば言ってなかったな、僕は久瀬……」

「ゴンザレスです」(←佐祐理:きっぱり即答)

「……」(←祐一)

「……」(←久瀬)

「久瀬・エルニーニョ・ゴンザレスです」(←佐祐理)

「み、ミドルネームあったのか!?」(←祐一)

「何だ!? そのスワローズが優勝しそうなミドルネームはっ!?」(←久瀬)

「と、言うわけで、久瀬っちのフルネームは『久瀬・エルニーニョ・ゴンザレス』となりました、みなさんOK?」(←舞:仕切ってる)

「OK〜」(←田中:両手を高々と上げて)

「た、田中さんまでっ!?」(←久瀬:味方がいなくなった)

 

 

「ところで田中ちゃん」

「はいぃ? なんでしょう舞先輩」

「いや、未来が解る云々別にしてさ、本当になんでポスター2枚持って来てたの?」

「ああ、それですか、実はもう一枚持ってます、舞先輩も要りますか?」

「や、それ質問の答えになってないから」

「そうですね、強いて言うなら……なんとなく?」

「は?」

「いえ、佐祐理先輩がお昼に誘ってくれた時に、なんとなく持って行こぉかなって」

「…………え?」

「なんとなく、です」

コイツ実は直感で未来読めるんじゃねぇのか!? というのがこの場にいた全員の総意になったとかならなかったとか。

 

つづく


あとがき

久瀬会長と田中ちゃん再登場、ちなみに田中未来はそのまんま「たなかみらい」ちゃんです。

久瀬っちがどんどんお人好しになる今日この頃、この作品悪人いませんね。

……っていうか佐祐理さんが一番の悪人かも……。

ちなみにエルニーニョ現象のある年はスワローズの優勝確立が非常に高いという統計だそうですね。

でもとりあえず、Φ村家は阪神ファンであります。

 

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