「ただいまー!」

「ただいま戻りました、なのです!」

 

鎮守府内に幼さの残る、明るい声が二つ響く。

その声の方に目をやればセーラー服を着た栗色の髪をしたよく似た二人の少女が元気よく駆けていく姿が見える。

 

「雷、電! そっちは食堂……って、行っちゃった、もうっ」

 

走り去る二人の後姿を見送ったもう一人のこちらも同じセーラー服を着た少女が、手に持った帽子を振り回しながらため息。

その様子に、さらに後からゆっくり歩いてきたこれまた同じ服装をした四人目になる銀髪の少女が苦笑しながら声を掛けてきた。

 

「まぁまぁ暁、司令官には私たちで報告に行こう、二人は多分彼女に報告に行ったんじゃないかな」

「響は妹二人に甘くない?」

「ん、でも暁だってこの後挨拶に行くつもりなんだろう?」

「そりゃね、いつもなにかと私たち姉妹はお世話になってるし……」

 

暁、と呼ばれた少女は自分の妹にあたる銀髪の少女の言葉にしょうがないな、という感じでもう一つため息を零し、その妹、響を見ると被っている帽子の位置を右手で直しながら鼻歌でも歌いそうな程上機嫌で微笑んでいる姿が確認出来る。

どちらかといえば以前はもっと固い表情でこんな姿とか姉妹の間ですら滅多に見せることもなかったのに、と思う長女の暁だが、それもこの鎮守府に着任してからのことだと思えばいい転属だったと感じる。

もともと姉妹仲は良かった自分たちだったが、ここに来てから揃って笑顔が多い。

いい鎮守府に来れたと思う、いい提督にあたったかと言うと正直なんと言っていいかわからない。いや、自分たちの提督は悪くはない。むしろ優秀な提督だと聞いていたし実際自分たちが着任してからの業績も上々。らしい。

 

でも、

 

ここに来て自分たちが笑顔で居られる理由、鎮守府全体の雰囲気が柔らかく優しいのは多分、いや間違いなくあの彼女のおかげなのだろうと思う。

 

自分の姿が自分でも気にしている程にお子様気味なのも合わせて、大人の女性を思わせる彼女に最初は少し反発、対抗心みたいなのもあったこともあるのだが、間違いなく彼女の姿あり方は暁の憧れであり、

気が付いたら司令官への報告もそこそこに妹の響を連れて、下の妹たちがいるであろう食堂に足を進めてしまっていた。

 

 

特V型駆逐艦 暁型

暁、響、雷、電の四隻からなる別名第六駆逐隊とも言われる旧日本帝国軍の軍艦である。

同じ名前の彼女たちは実にオカルト的な話になってしまうがそのかつての大戦で活躍した軍艦達、それらが祭られ、神格化された分御霊であるとされる。

 

そのすべてが女性の姿、特に駆逐艦は少女の姿で現れる。暁型の彼女らも例にもれず可憐な少女の姿であり、その性格も姿に合わせてまだちょっと幼さを残し可愛らしい。

 

暁はそれでも自分が暁型の長女だからと、なるべく毅然とした態度を取ろうとしているのだが

食堂に向かうその足がどことなく軽やかであり、表情も頬が緩んでしまっているといった状態。

そのことに気づいているが特に何も言わずに横を歩く次女の響の方が大人だよねという噂があったりするがこの際それはどうでもよく、心持ち足早に歩いて辿り着いた食堂に入ると

 

「暁ちゃん、響ちゃんおかえりなさい。二人ともお疲れ様」

 

先に行っていた雷、電に纏わりつかれるように挟まれていた、暁の憧れの戦艦、大和型一番艦 大和が笑顔で出迎えてくれたのだった。

 

 


 

みんなのあこがれやまとさん

 


 

 

艦娘。

前述したがかつての旧日本帝国海軍の軍艦の分御霊である。

彼女たちが歴史に現れたのはそう昔でなく割合最近だとされてはいるが、実際問題軍関係のことなので機密となっている部分が多い上に、実は詳しい事は解っていない。

けど、なんか使えるからそのままお力を借りようぜ的になっているという噂まであるなんかそんな存在である。

上層部ならともかく現場で働く軍人からしてみれば、彼女たちが強力な存在であるという事実で充分なわけなので特に追求することもない。

さらに身もふたもないことを言ってしまうと、艦娘自身も現れた経緯、その姿などに関しては憶えてないのか知らないのかわからないが、よくわからないもんなんだそうだ。

 

その為、なんかそんなもん、でみんな納得するしかない、というのが現状である。

 

ただ、かつての大戦から数十年の時が経ち、戦後からこちら平和を求める世の中で彼女たちのようなオカルトまで絡んできそうな兵器が必要になるのか、と言われると――必要であるという回答になる。

もっとも、人と人との戦争に利用される訳ではなく、深海棲艦、そう呼ばれる謎の船が世界の海に巣食っていたからである。さながら幽霊船のような、または得体のしれない生き物であるような存在で、海を行き来する船に襲い掛かり海の奥底に引きずり込む。

艦娘は、そんな深海棲艦に対抗できる大きな戦力として期待され、そして活躍している、そんな時代。

 

と、なんか難しいことを説明されているが深海棲艦の生態もよくわかってないわけで。

結局のところなんかよくわかんないけど、よくわかんないものが海に出てきて、普通に戦っても勝てないから、なんか出てきちゃったよくわかんないものを利用してなんとかしようぜ、という

よくわかんないの登場数が多い事態なので、なんとなくわかれば説明なんか読み飛ばすくらいでいいと思う、そんな世界の事情。

 

なにより、今、舞台となるとある鎮守府においては片手間で深海棲艦と戦い、平和を満喫する艦娘たちであふれていたりするので、そんなシリアスな話でもないのである。

 

 

そんな件のとある鎮守府の昼下がり。

 

ででーんという擬態語が付きそうな存在感をたっぷり含んだ佇まいの鎮守府本館屋上において、この話の主役なんじゃねーかなーと思われる皆の憧れ、日本国民の心の拠り所、大和型一番艦の艦娘であらせられるところの大和さんはその屋上から見える遥か遠くの海の水平線を眺め――

 

 

なんだかとっても困っていた。

 

 

「うん、なんとなく、なんとなく解ってる。頼りにされてるんだろうなぁ……そーだよね、大和だもんねぇ私」

 

遠くを見つめる、というよりどことなく焦点の合ってない虚ろな目で諦めたように呟く大和型一番艦。

現在この鎮守府内で4隻しかいない戦艦の一つであり、その強さ、知名度から思いっきりみんなの頼りにされる上に半ば崇拝されかかっている存在だったが。

実は彼女には人に言えない秘密があった。

人に言えないつーか、むしろ言っても信じてもらえないとかドン引きされるのが正解なので「このことは皆には内緒☆」ではなく「こんなん知られたらどんな目でみられるか」的な人に言えない秘密だ。

ぶちまけて言うと、彼女、大和は艦娘として今の姿に生まれた時から奇妙な記憶を持っていた。

解りやすく言ってしまうと、別世界の一介のサラリーマンやってた記憶だ。

なんだそれ、的な話なのはどうしようもない。そのサラリーマンが実は裏で悪を滅ぼすニンジャしてたとか、なんか悪魔を召喚出来ちゃうパソコン拾っちゃうとかそんなわけでもなく、年収430万円、東京都住まい独身貴族の悲しい記憶だったりするので、普通に考えればきっぱり忘れるなり心の中に封印するなりで事なきを得る、で済む話なのだが。

 

問題は大和の置かれる現状、それが記憶の中のサラリーマンの知識に存在した。

 

なんでも艦娘を集めて深海棲艦を倒す、というそのまんまな話が作り話つーかゲームとしてあったりした為、この鎮守府に来たばかりの頃に出会った魚雷いっぱい持って歩いてた重雷装巡洋艦北上を見かけて「うは、スーパー北上様www」とか呟いてしまうという弊害に見舞われた。不覚。

しかしながら、記憶の中の話では別段ストーリー性はなく、ただただ戦うだけというものだったのでその知識を何かこの世界で有効に活かせるという訳でもないので、正直いらない知識だったりする。

もともと戦うための分御霊、艦娘として生まれた為自己はあるにはあるが生まれたてで希薄なところにそんないらん記憶が流れ込んだものだからそっちに引きずられ掛けて周りの艦娘達を見て「夜戦バカキター」とか「艦隊アイドルラブリー那珂ちゃん」とか心の中で騒いでしまうのである。マジ弊害。

 

そして今日も、なんか懐いてくれてる暁型姉妹に囲まれて「天使すなぁ、暁型は天使っすなぁ」とか表には出さずにウハウハしてた、そんな自分に自己嫌悪中なのが今の屋上遠い目である。

 

「どーしたものかしらねー」

 

屋上の柵にもたれかかり空を見上げて気怠く呟く。もっとも半ば諦めて楽しもうと随分前に決心しているから方針は決まっているんだが。

問題は、楽しもうと決心した時にテンション上げちゃったせいで思いっきり張り切った結果、唯でさえあの大和ということで羨望の眼差しがあったのに、「強い、明るい、優しい」と当鎮守府で評判になり憧れ倍プッシュになったことである。

なお、強い=実際大和だし強い、明るい=テンション上がりすぎた、優しい=うは艦娘や、本物の艦娘や! といろんな子に話しかけた結果。である。マジサラリーマンの記憶困る。

 

周りをそんな目で見ているという申し訳無さもあるが、何より困っているのが

その記憶、一番好きな艦娘が大和だと言う事実。

記憶に引きずられて鏡の前で「うん、今日も私、変わらず美人です」とか心の中で言いながらポーズ取ったりしてしまい恥ずかしくなるという事件が多発している。自室なので今のところ誰にも見られて無いのが救い。

そこまでなら、いやそこまででもいろいろアレなのだが、「大和とキャッキャウフフしたいのに、なんで私が大和なんだ」という憤りを感じた時にはいろいろもうダメだと思った。

いっそこんな中身がダメ戦艦、解体なりなんなりして役立てて貰えれば、なんて考えたりもしたもんだが「いやダメですね、むっちゃんのムチムチ具合をこの目で見るまでは……」とかで延命を希望した自分と記憶の中の元ラバウル基地提督のサラリーマンはもう末期だと思う。冗談抜きで。

 

そんな自分のあり方を顧み、柵にもたれかかった体勢で今日何度目かわからない大きなため息を吐く。ああ、暁ちゃんの純粋な眼差しが痛い。あの目で「大和さんのような素敵なレディーになりたいんです」とか言われてみ?ごめんね、中身こんなんでごめんね、本当ごめんね。

 

「大和、大和、ハの字になってるわよ、眉」

「あ……お伊勢さん」

「……神宮か私は」

「ご利益ありません?」

「ないわよ」

 

いつの間にか、というかまぁ気づいていたわけなんだが今しがた屋上にやってきた戦艦 伊勢がため息をつく大和の前で両手の人差し指の先を自分の眉尻のあたりに充て上に押し上げながら話しかけてくれる。そんな陰気くさい顔すんなってことだとはさすがの大和も解る。

ただまぁ、気さくに話しかけてきてくれたので大和もちょっと気が緩んで頭の中で呼んでいた呼び名でつい呼んでしまう。しまった、とは思ったが出てしまったものはしょうがないんで毅然とした態度を頑張って続ける大和マジクール。

大和のとぼけた言葉に苦笑しながら伊勢は大和の横にくるっと回りながら近づき、同じように柵にもたれかかる。

伊勢型一番艦 伊勢 戦時にはその体の周りに艤装として大きな砲台を惜しげもなく複数付けている為ゴテゴテした強大なイメージが先行する艦娘であるのだが、その実普段の艤装無し姿は大和より小柄な女性であり、首の後ろまで伸ばしたポニーテールが可愛らしいと凛々しいを同居させている女子力高そうな戦艦。長過ぎで手入れ大変な大和のポニーテールとは違いそっちの方が便利でいいな短くしようかなとか考える大和は自分のアイデンティティがちょっとやばい。

更に言うなら伊勢は戦艦としてはこの鎮守府現在のメンバーの最古参であるため大和にとっては先輩にあたり、実際随分とお世話になっている。頼りになるお姉さんキャラってやつだ。初めて会った時の大和の感想は「まだ航空戦艦じゃないのかー」であったというのはどうでもいい話である。とことんサラリーマンの記憶に引きずられている。

なお、大和より小柄と言ってもさすが戦艦だけあって標準より体躯は良く、大和が大きすぎるだけなのだ、艦娘資料写真で伊勢の方が大きく見えたりするのは艤装のせいである、間違いない。

 

「しかし、余裕があるように見えて、なんだか抱え込んでるみたいね、大和も」

「余裕なんてありませんよ、只でさえ燃費が悪くて迷惑かけてますのに」

「それを補って余りあるくらいの活躍だったというのに、謙遜も過ぎれば嫌味になるわよ」

「んー……そんなもんですかねぇ、いえ、私の問題というよりは全体的な話で……私のせいで重巡洋艦の出番を無くしてしまっていないかというのが気になるところで」

 

なんか心配されてるっぽいのでとっさに思いついたことで話を濁す大和だったが、そのとっさに思いついたことも以前からちょっと考えていたこと、どっちかつーとサラリーマン記憶からくるゲーム的な感覚、私頑張りすぎて戦艦の運用増えてる→重巡洋艦の出番が減ってね?→重巡のレベルあがんね→やべ、という思考だ。やっぱりダメだこいつ。レベル概念とかねーよ。

 

ただまぁ、確かにあのテンション上がりまくり大活躍事件からしばらく、大和を頼りにしたような戦艦基準運用が目立ったのは事実なので同じようなことをちょっと感じていた伊勢も「ふむ」と考え込んでしまう。

 

 

伊勢から見てこの大和、ちょっと変、というのが率直な感想になる。

他の分御霊の大和に会ったことがあるわけでもないので何とも言えないが、過去の資料や聞いていた大和の艦娘のイメージから考えると「だいたいあってる」なのだ。

だいたいあってるならいいんじゃないかと思うが、その小さな合ってない部分が大和を大和として認識するのにどうにも引っかかる。

『立てば芍薬〜 などの言葉が似合う姿をしているが戦場においては強力無比、普段は穏やかな性格で大人しく優しい孤高の大和撫子』

これが聞いていた大和の情報。なお、どこぞの大規模鎮守府における提督たちによる独断と偏見に満ちた情報である。

ちらりと横目で改めて姿を確認すると、どことなーくアンニュイな雰囲気を漂わせているが、同じ女性として小さな嫉妬も湧き起こるほどに整った姿をした美女だ。暁がこうなりたいと騒ぐのも解る。

この国で一番有名な、そして日本を意味する名を与えられた大戦艦であるため知名度、神格として恐ろしいほど高い為これほどの存在感のある姿、強さになったのだろう。

また、あの昔の大戦では正直言って活躍する場が無かったこと、その為、海外にその名は響いていない、それらの分の弱体化補正を含んでいることになるはずである。

あれで活躍してたら正に神、というわけね。と伊勢はしみじみ思う。

ただ、

聞いていた情報にある孤高の大和撫子部分だ。

そこから伊勢の中では、大和は普段周りと距離を置いて静かにお茶でも飲んでいる、という姿を想像していた。実際大和なんて大物が前に来てしまえば多くの者が緊張して萎縮してしまうだろうし、それもあって孤高扱いなんだろうと思っていた。

武蔵という妹、さらには信濃という妹がいるという噂もあるが、そのほとんど全てが各鎮守府最強となる大戦艦のため同所に配属されることは極めて稀。

だから、伊勢は先輩としてこの鎮守府に馴染めるように大和を気にかけてなるべく多く話しかけようと思っていた。思っていたのだが。

 

――初めて会った時、何故か大和は北上に艤装をつけさせ、かっこいいポーズをリクエストしてはしゃいでいた。

数日後には慣れるためにと遠征に一緒に行かせたほぼ同時期配属の暁を照れるのをそのまま自分の膝の上に載せて嬉しそうに抱きしめていた。まぁ、暁は困ってたようだったのだが。

 

艦娘、その環境によって多少なりとも性格が変わってくるとは言うが、それでもこの大和、なんか違くない? と思った伊勢は多分悪くない。が、悪い影響などみじんもなく、気が付けば鎮守府内になんだか緩やかな空気が流れるようになっていた。

だから、『ウチの大和』はこういうものだと、次は何してくれるのかと楽しみも含めて受け入れているのだ。

 

ただ、それを置いておいてもこのウチの大和がウチの艦娘達から頼られているというのは――

 

「どう、運営したらいいかしらね、重巡」

「そうですねー、戦艦の下位互換なんて言われたりすることもあるみたいですけど、雷撃がある分使い勝手としては戦艦より優秀だと思うんですよね、相手にフラグシップ級が居なければ……いっそ戦艦は必要ないと考えても……」

「極端にも見えるけど、ウチの重巡だと……高雄型?」

「その高雄さんに旗艦を任せて、愛宕ちゃんを一緒につければいいかな、と」

「ま、そうね、少なくともまだ戦艦が今より少なかったころはそんな感じだったわよ」

「と言っても、その辺は司令の判断ですから」

「進言してみたらどうかしら、裏の司令官」

「……それ辞めてくださいよ、反省してるんですから」

 

通称 裏の司令官様と呼ばれることもあるからだ。

別に裏というほど裏でこそこそしてるわけでもないが、この大和、作戦会議で案の修正をする、現場の判断で陣形指示する、さらにはたまたま秘書艦をやった時には書類関係のチェックが厳しいと提督から泣き言が出たなどという噂があり、もう大和っちが提督でいいんじゃないかなとか北上に言わせた時に出来た物である。

 

なお、案の修正に関しては会議でいろんな艦娘たちがやっているので珍しい話でもない、提督とはいえまだ若いのもいるし文句付けどころのない案などある方が珍しいのでこれは大和がどうこうとかいう話ではない。別の鎮守府の話では立案から決定まで正規空母の加賀が一人でやっているという噂のところもある。加賀さんパネェ。

陣形に関してはあれだ、ゲームの知識ってやつで実際の海では多少の融通が利くこともあり、索敵で相手の陣形を見て後出し出来るときはしちゃおうぜ、うは、ズルイwwwというノリ、現実では有効な陣形になっているのかどうか正直解らないけどゲームに合わせてWikiで調べていた陣形ジャンケンを試してみているだけである。効果はよくわからないので役に立っているかどうかなんて誰も知らない。ただ、戦いには勝っている為なし崩しに評価されているわけだ。加えて言うなら誰も何も言わないので、旗艦が提督無視して勝手に陣形指示出したらアカンとか知らんのだ大和は、だから自分が指示するもんだと誤解している。

書類関係は、これもう、一般企業で主任をしていたサラリーマンの記憶が不備をどうしても許してくれなかったという流れである。真面目な話、不備で資材になんかあった場合など一番燃費の悪い自分が迷惑かけるから更に必死であったりする。

平たく言うとゲームの知識の影響と自分の燃費の悪さのせいで、えらく資材、効率を気にする効率厨なわけだ。事情を知ってる人がいたなら、ゲームから離れろってんだこのゲーム脳とか罵られていること請け合いだ。でもってそれをするのがあの大和と言うことも相まってみんな話をきちんと聞いてくれちゃうので大和さんマジ凄い、の誤解スパイラル状態。

 

一番の問題は、そんな状態でお互いが微妙に何かを誤解しているということに、誰も気づいていないということなんだろう。

 

「ふふ、悩むくらいなら提督と相談すればいいのに」

「いえ、その、ちょっと出しゃばり過ぎてるというのを気にしてまして……」

 

裏の司令官呼ばわりでぷぅと膨れた大和を可愛いと思いつつ、笑いを漏らしながら言葉を返すが、出てきた返答がこれである。

ああ、さっきの反省というのは出しゃばり過ぎてると思っての反省なのか。と伊勢はついに隠す気も無くなって大和の前で大笑い。

そんな姿に「もう」と眉を寄せてむくれる大和。

いやはや、こんな表情もするんだ、と大和を見つめながら伊勢は思う。

出しゃばるのを自重どころか、もっと大和に任せて楽したいとか零していた提督のことを伝えたらこの目の前の戦艦はどんな顔をするのだろうか、と。しかし、まぁそれは言うべきなのかどうなのか、提督のこと、鎮守府のことを考えると簡単に出せる答えでもないが、

ただ、自分の気持ちを考えると、

 

 このままの方が大和は面白いことしてくれるんじゃないかしら

 

と、なんだかんだで平和な鎮守府の空気にどっぷり浸かってしまっているような結論を出す伊勢型のお姉さんだった。

 

 

 

後日、大和を大笑いした報復なのか

鎮守府内で伊勢の呼び名がお伊勢さんに統一されていたのは甚だ余談である。

 


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2014/01/25

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