保護者達の伴奏曲 第三幕−第五楽章−

作:デビアス・R・シードラ様


「・・・なるほど」

祐一、真琴から詳しく話を聞き、そうつぶやく美汐。

「なるほど」

もう一度。しかし、その声は非常に硬質かつ冷たい。

この話をする前に祐は奏花とともにお風呂にいっている。

嫌なこともすべて洗い流して来い、そう祐一が言って二人を送り出したのである。

「・・・ごめん、祐一」

「ん?」

「祐がいる前でしないほうがよかったね」

うなだれる真琴。先ほどの祐の言葉、その言葉にかなり答えた真琴である。

美汐に祐一と一緒に状況を説明し、愚痴をいい、少し冷静になったのである。

「まあ、そうだな」

真琴の言葉にうなづく、祐一。

「お姉ちゃんなのに気づいてあげれなかった・・・」

寂しそうに、悲しそうに、申し訳なくうなだれる真琴。

「怒りでそこまで気が回らなかったということでしょう」

「祐のために怒ってくれたんだよな、真琴は」

美汐と祐一の言葉にうなづく、真琴。

「だって、許せなかったんだもん」

「その気持ちはわかります、真琴」

真琴の言葉に大きく名づく美汐。

「私も許せそうにはありません。相沢さんに対する最近の態度も許せませんが、それとはわけが違います」

静かにそう言い、その言葉とともに沈黙が場を支配する。

「お風呂上がったよー」

どこか空元気にも聞こえる声。その声とともに祐がリビングへと戻ってきた。

「お?」

髪の毛を乾かしたときにしてもらったのだろうか、祐の髪はポニーテールになっていた。

「似合いますよね?」

奏花の言葉にうなづく祐一。

「可愛いよ、祐」

真琴の言葉に照れたような笑顔で答える祐。

「真琴お姉ちゃんもポニーテール似合うと思うよ」

「あう!?そうかな」

祐の言葉に自分の髪の毛を触りながら答える、真琴。

「やってみようかな」

「うん、祐とおそろい!」

「うん」

祐のおそろいという言葉に決心が固まった模様。

「っと、もうこんな時間か。じゃあ、俺は美汐送ってくるわ」

時計を確認し席を立つ祐一。

「あ、大丈夫ですよ」

やんわりと断りの言葉をいれながら美汐も席を立つ。

「うん?可愛い女の子を夜道に1人で帰すようなことができるか」

「か、かわいいですか」

可愛いという言葉にこれでもか!というぐらいに反応してしまう美汐。

ある意味社交辞令のような言葉だとは美汐も思ってはいるが、それはそれ。

自分の想い人に言われれば、それは別の意味を持ってしまう。

「お姉ちゃん可愛いよ」

「どちらかというと美人です」

祐と奏花のコメント。それによりさらに頬を赤く染め俯いてしまう美汐。

「さ、そういうわけだからいくぞ、美汐」

美汐の手をやや強引に引きながら、祐一は部屋から出て行く。

「あ、真琴先に風呂はいってくれ」

と言い残しつつ。

 

 

 

「それにしても名雪さんはどうしてしまったのでしょうか」

美汐の家までの工程−といってもそれほど遠くにあるわけではないが−話をしながら歩く二人。

「どうしてしまった?」

「ええ。昔、といってもそれほど前の話ではありませんが、祐ちゃんを殴ろうとする、そんなことをする人では決してなかったはずです。非常に優しい方でしたし、陸上部に入っているクラスの子も面倒見のいい先輩として慕っているといっていましたし」

遅刻はよくする、というか朝連にはまずこない名雪ではあるが、後輩からは慕われていた。

マネージャーの仕事を手伝ったり、自分の練習を置いても後輩の練習に付き合ったり面倒見が良いのだ。

「さてな」

美汐の言葉にそう返す祐一。

「誰かの為に何かをする、ってことじゃなくて誰かが自分のためにしてくれる、そのほうが楽だからな」

「・・・人に頼らずにやってきた人が、頼ることを知ってしまった。そして、それに完全に依存してしまった、そういうことですか?」

「本当のところはわからないがな」

そう言って話をきる、祐一。

名雪にとって誰かのために何かをする、してあげるということは、喜びであった。

もともと優しい子であり、自分よりも他人を優先する帰来があったのだが、自分が手伝いその子が笑顔になることが好きだった、とも言えよう。

しかし、誰かが自分の為に何かをしてくれる、何の対価も要らない。自分が頼めばやってくれる、その甘美さに酔ってしまったのだろう。

だからその甘美な世界、自分と祐一との世界を邪魔するものは全力で排除しなければならない。

そうつながってしまっているのかもしれない。

「・・・正直わかりません。人に頼ることは悪いことなどとは思いません。でも」

そこまで言って言葉を切る。

「名雪さんのは頼るなどど言う言葉では表現できません」

「まあ、どこか俺のことを都合のいい道具みたいに思っていたんじゃないのか」

「都合のいい道具ですか?」

「ああ、で、祐がきたことによってそれを取り上げられた。それはわたしのだから返して〜ってとこかな」

「子供ですか!」

「子供なんだろ」

どこか咎めるような美汐の声に淡々と答える祐一。

「まあ、子供だから何を言っても無駄だろ。悪いのは向こう、自分は悪くない。まさしく子供の論理武装さ」

「・・・」

「さて、じゃ、これで」

「え?」

祐一の言葉に気づいてみれば、すでに美汐の家の前である。

「あ、送っていただいてありがとうございました」

「おう」

深々と挨拶する美汐と対照的に気さくにこたえる祐一。

美汐が玄関に入っていくのを見て祐一も引き返す。

「あ・・・そういえば」

 

気になっていたスナック菓子の発売日が今日だったことを思い出す。このところいろいろあったのですっかり忘れていたのだ。

どこからそれを思い出したのかはわからないが、突然思い出す。

「青汁withバナナチョコスナック・・・どこをどうやったらそんなものを考えるんだか」

そんなことをつぶやきながら、近くのコンビニへと立ち寄って帰ることに決めた祐一。

 

まあ、そこでは予想外の出会いがあるわけだが・・・

 

 

つづく?


あとがき

つかれた

 

以上・・・遅れてごめんなさい・・・ってレベルでもないか?

えーだれか私の私生活の忙しさを何とかしてください(オイ

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